フィリピンは、1月に中国・武漢からの入国者を追い返し、中国・香港のほか、2月には韓国からの入国も制限していました。
娘の学校では感染者発生国への旅行は取りやめるよう、また、1月から日本を含むCOVID-19発生国から来た人や、シヌログのような大勢と接するイベントへの参加者と接触した人は自宅待機2週間が義務付けられてきました。武漢からの旅行者がセブに来てマニラで亡くなったということで、一時は騒然としたものです。その後、しばらくは穏便な日々が続いていました。
学校休校(・オンライン学習)のお知らせ
どうもマニラが封鎖されるらしい、という話を聞いたのが3月に入ってから。「まさかねー」と思っていたら、あれよあれよという間にロックダウンへ…。
娘の学校もオンライン学習に切り替わると連絡が来て、セブの学校はすべてホーリーウィークまで休校になったという知らせが入りました。日本語補習校も二週間休みの連絡。くもんも教室内での学習はできず、ワークシートだけ取りに来て自宅でやってくるようにと。だだだだん、と雪崩のような「休校」指示。
「なっがいなー、でも一か月くらい仕方ないか。籠って過ごそう」と思っていたところでした。
1-3月初頭までのフィリピンのCOVID-19措置等
遡ると初めてフィリピンで症例が確認されたのが1/30でした。その後、2月までは下記のような流れで入国制限・渡航禁止措置をとってきました。
- 1/30 中国・武漢市からフィリピンに到着した中国人女性が、オーストラリアにおける検査の結果、新型コロナウイルスに感染していることを確認
- 2/2 感染者が死亡したことを発表
- 2/3 中国本土とその特別行政区からの入国を禁止。フィリピン人及び永住許可を保有する外国人は14日間の検疫を受けることを条件に入国を認める
- 2/5 中国からの渡航者の感染を確認(3人目)。武漢市から香港経由でセブに到着しその後ボホールに移動。回復し帰国が認められていたが、2/3に感染確定。
- 2/7 非常に多くの人が集まる行事への参加を避けることを強く求め、大規模な行事等の開催を当面中止することを推奨
- 2/10 フィリピン人による中国・香港・マカオ・台湾への渡航を一時的に禁止
- 2/14 台湾への入国・渡航禁止措置を解除
- 2/18 地方自治体に対し,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防措置が厳格に行われている限り、大規模な行事等の開催を継続してよいと通知
- 2/26 韓国大邱広域市及び慶尚北道清道郡に係る入国・渡航制限
流れが変わったのが3月に入り、しばらく発生のなかった症例が増えたことです。じわじわと市中感染が広がっている、という危機感が保健省の通知からも見て取れます。
- 3/6 日本への渡航歴のある48歳フィリピン人男性。2/25にフィリピンに戻り、3/3悪寒と発熱があったため病院で診察し検査したところ、3/5にCOVID-19陽性であることを確認(4例目)。国外への旅行歴がない、高血圧と糖尿病の既往歴のある62歳フィリピン人男性。2/25に咳があった。3/5にCOVID-19陽性であることを確認 (5例目)。 外国への渡航は確認されていないこの男性は、サンファン市のバランガイ・グリーンヒルズにあるイスラム教徒の礼拝堂を定期的に訪れていた。
- フィリピンを旅行した各国旅行者の感染発覚。①ベトナム、カンボジア、フィリピン等に滞在し(フィリピン滞在は2/21-28)3/4に日本に帰国した40代の男性。② 2/20-28 までフィリピンに滞在し2/28に日本に帰国した30代の男性。③2/28-3/3までフィリピンに滞在した台湾人男性。④オーストラリア・シドニー在住の女性。2/13にマニラ、パンガシナンを訪問し、3/2にフィリピンを出発。
- 3/7にCOVID-19アラートシステムをCode Red sublevel 1 に引き上げ
- 3/8に4例、3/9に10例確認し合計20例。包括的な接触追跡調査を行っており、確定症例に接触した可能性のある人々を即座に特定し、必要に応じて隔離するため関係当局と協力。
この頃から、在フィリピン日本大使館から【緊急】と題したメールが届くようになり、緊迫感が漂い始めました。
セブのコミュニティ隔離措置
3/12にドゥテルテ大統領はCOVID-19の対策を発表。感染者数はこの時点で52、初めてフィリピン人の死者が出ました。思い切った施策です。でも、これくらいしないと防げない、と判断したからこそでしょう。
(1)公衆衛生警戒水準をコード・レッド・サブレベル2(最高レベル)に引き上げる。
(2)マニラ首都圏において次の措置を30日間とる。
・マニラ首都圏の全てのレベルの学校を4/12まで閉鎖。
・期間中、多くの人が集まるイベントは禁止。
・.マニラ首都圏全体について隔離措置をとる。それ以外の地方は、異なる家庭から二人の患者が出た段階でバランガイ隔離。二つのバランガイに出た段階でミユニシパリテイ、シテイ等のレベルで隔離、二つのミュニシパリティ、シテイ等に出た段階でprovince全体を隔離する。 (注:マニラ首都圏外からマニラ首都圏への通勤はマニラ首都圏で雇用されていることの証明を提示すれば可能)
・行政機関は期間中機能停止。ただし最低限の職員は維持。公衆衛生等は完全に機能させる。立法・司法も同様にすることを勧告
・民間企業には柔軟な業務体制を取ることを推奨。DOLE(労働雇用省)・DTI(貿易産業省)がガイドラインを発出。製造・小売り・サービス業は営業継続を勧告。
・首都圏内の公共交通機関は原則として継続して運航。
・首都圏に出入りする陸路、内航船舶、国内便航空機は3/15に停止。
・上記措置は毎日モニターし決定から毎日再評価する。上記措置はフィリピン国家警察やフィリピン国軍によって実施される。
(3)マニラ首都圏以外の地方自治体(LGU)は学校の閉鎖に裁量を有する。
(4)フィリピン人国外労働者(OFW)は湖北省を除く中国本土に危険を理解する旨の誓約書に署名して渡航することが認められる。
(5) 国内感染が起きている国(注:日本を含む。)からの渡航者は入国制限を課される。ただし、フィリピン人及びその外国人配偶者・子、フィリピン政府が発行した永住査証所持者、9(e)外交査証所持者は除く。
セブは第二の都市なのでいずれくるかも、という予想をする前に15日には州知事が「空路でセブ州に到着するいかなる外国人も原則指定される施設において自己費用負担で検疫を課せられる」と発表。自己費用負担で検疫…2週間ホテル代支払うって…。
続いて16日夕方には、上記の措置をさらに厳格にしたルソン全域に「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の措置をとる旨が発表されました。
(1)全家庭が自宅検疫(隔離)を行う
(2)交通機関は停止(ただし、現在首都圏にて労働し首都圏外に自宅がある者は帰宅可能)
(3)必要不可欠な食糧・医療サービスは継続
(4)警察官による検疫措置が強化される
そして、翌17日にメディアルディア官房長官の名で、メモランダムが発出。長いです。
(1)4/14まで学校の授業・活動は停止。
(2)大規模集会は禁止。
(3) 全家庭で厳格な自宅隔離措置をとる。必要不可欠なものを得るため以外の移動は制限される。食糧・重要な医療サービスは継続する。検疫措置実行のため警察官・軍人の役割が強化される。
(4) 行政機関では国家警察(PNP)/国軍(AFP)/ 沿岸警備隊(PCG)/ 医療現場サービス / 境界管理等に従事する者(必要最低限の人員にて業務継続)を除いて自宅勤務が実施される。
(5) 民間部門においては食糧・医療の製造に関わるような必要不可欠な分野(公共市場/スーパー / 食料品店 / コンビニ / 病院 / 診療所 / 薬局 / 食糧準備配達サービス / 補水所 / 食糧・医療の製造工場 / 銀行 / 送金サービス / 電力・エネルギー・水 / 通信)のみ必要最小限の人員にて営業を継続する。
BPO、輸出中心産業は必要最小限の人員にて営業を継続する。
メディアは大統領府広報部門(PCOO)から発行された証明書の保持を条件に隔離地域内の移動を覚書発出後72時間内であれば認められる。
警備員も同様に72時間以内の隔離地域内の移動を認められる。
(6) 大規模公共交通機関の運営は停止される。
(7) 陸路・内航船舶・国内航空便は制限される。
強化されたコミュニティー隔離措置発効(注:3/17午前0時)後72時間以内であればルソン地域の全ての空港から出国可能。
強化されたコミュニティー隔離措置の発行時においてトランジット途中のインバウンドの国際旅客は入国を認められる。フィリピン国民(外国籍の配偶者及び子を含む)並びにフィリピン政府が発給した永住査証所持者及び9(e)外交旅券保持者は入国を認められる。ただしIATFにより定められた入国制限対象国からの入国の場合は,適用される検疫措置に従うことを条件とする。
貨物の隔離地域域内の出入りは妨げられない。
陸・海・空路の特に医療機器等の輸送や人道的支援といった公務で入域する軍人等の公務員の入域は認められる。
陸路・内航船舶・国内航空便は制限される。
(8) 社会福祉開発省(DSWD)及び労働雇用省(DOLE)は,財務省(DOF)・予算管理省(DBM)・貿易産業省(DOTI)と協力して隔離措置で被害を被った労働者や居住者を対象に社会的影響を緩和する措置を講じる。同措置は賃貸料支払いのモラトリアム、ボーナスの先払い、公共料金支払いの延期、小・中規模企業への援助などがあげられる。
(9)DSWDはもっとも被害が大きい地域の住民に対する食糧援助対策を行う。
(10)上述のガイドラインへ違反した場合は関連する刑法・行政法上の処置の対象となる。
(11)IATFは官房長官、大統領府長官、国防大臣、環境天然資源大臣、貿易産業大臣、社会福祉開発大臣、財務大臣、教育大臣、農業大臣、国軍参謀総長、陸・海・空軍長官、沿岸警備隊長官、国家警察長官 、関係省庁会議が引き込む関連は、保健衛生上の事態が収束するまで、毎日新型コロナウイルス対策・指針を観察し、 継続的に再検討していく。
(12)IATFは保健省(DOH)を通じ、ルソン全域に強化されたコミュニティ隔離期間に講じられる新型コロナウイルス関連の措置について情報を拡散する。
これはまずいかも、と思ったのが、このメモランダムのお知らせの後の「在フィリピン日本国大使館(マニラ)臨時休館のお知らせ」というメールでした。第一報が明け方、しかもいつまでか不明、そして数時間後に取消しという混乱ぶり…。大使館職員の方もマニラ封鎖に相当焦っていたのでしょうか。
立て続けの緊急メールの後に来た、セブ州の追加措置とフライト大幅な欠航のお知らせ。セブ封鎖が現実味を帯びてきました。モールが続々とスーパーマーケットとホームセンター・銀行以外の営業停止を発表。セブパシ、PALのCA大量解雇。語学学校、学校の休校。交通手段の限定。失業者も続々出ています。COVID-19にかかった場合の医療面の心配もさることながら、失業者大量発生による治安悪化や、交通機関が制限されることでの行動範囲の制限等が心配でした。
日本人会の働きかけで臨時便に
情報が錯綜する中、19日に大使館から「セブにおけるフライトの状況等」の緊急メールが届きました。日本への帰国フライトの予約が極めて困難な現状にあるとのこと。知人からの情報で日本人会の帰国希望者リストに登録すれば臨時便で帰国できるかもしれないと知りました。その時点ですでに1,000人いると聞いていたので、ダメもとで登録。
費用が一人1,000ドル超え。普段乗っているセブパシの3倍近い値段です。その時取れるPALの3月末のもっと安いチケットでもいいと考えていたのですが、 飛ばない可能性が高いという噂も根強く。夫と相談し、臨時便で一時帰国する判断になりました。

翌20日、希望者は21日のチケットを購入できる可能性があるのでフィリピン航空のオフィスへ11時に来るようにとのお知らせが!でも何時間かかるか分からない。チケットを買いに行く友人たちと一緒だったことも心強かったです。
同じ学校の知人宅に娘を預け、チケットオフィスへ行き、整理券を受け取って説明を聞き、いったん帰宅。くもんのワークシートやランドリーの受取、コンドミニアムの光熱費支払いなどの用事を済ませ、午後3時前にフィリピン航空を再訪。無事成田空港の許可が下り、午後4時には発券してもらえました。一日がかりと覚悟していましたが、対応いただいた方々のおかげでスムーズにいきました。
娘を預けていた知人宅から帰宅し、いざ荷造り&夕食&片付け。連日のCOVID-19情報収集で睡眠不足・体調不良(女性特有)の上にほぼ徹夜で結構しんどかったですが、娘のテキパキしたパッキング術にも助けられ、何とか完了!
役に立った情報源など
今回のドタバタ帰国、 役立ったのは大使館の緊急メールと現地ニュース、フィリピンの日本人ネットワークです。
特に、今回の発券やフィリピン航空との折衝には、セブ日本人会有志の皆様がボランティアで対応くださったそうです。しかも私は日本人会に入っていなかったのですが、それでもOKでした。本当に頭が下がります。セブに戻ったら入ります。
大使館のメールは「たびレジ」のオンライン在留届から登録できます。Facebookの「フィリピン在住の日本コミュニティ」は情報が迅速です。フィリピン、特に自治体の通達は毎日コロコロと変わるので追いかけるのが大変でしたが、とても参考になりました。
- たびレジ https://www.ezairyu.mofa.go.jp/
- セブ州のニュース Sugbo newshttp://www.sugbonews.com/
- Facebook Department of Health(フィリピン保健省)
https://www.facebook.com/OfficialDOHgov - Facebook フィリピン在住の日本人コミュニティ https://www.facebook.com/groups/1422147675299426/
- twitter セブポット編集部 https://twitter.com/cebupot
一時帰国して思うこと
COVID-19から身を守るのに、対策があまり取られていないけれど、医療レベルと治安に分があり、健康保険のある日本と、医療レベル、医療費、治安が心配だけど、シャットアウトとロックダウンの判断が早かったおかげで感染拡大が少ないセブと、どちらが安全なのか迷いました。夫が持病持ちなのと、どうなるか分からない時なので家族で一緒の方が良いことから、私は一時帰国を選びました。
これを書いている現時点でもどちらが良いかは分かりません。
現在、日本から行ける外国は非常に限られており、フィリピンにいつ戻れるか、全く見通しが立ちません。数か月、下手したら年をまたぐ可能性もないとは言い切れません。まるで世界大戦の様相を呈しています。必要な人に必要な医療が行き渡り、なるべく被害が少なく済む形で一日も早い収束を祈ります。

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